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Slickhorn Kiva   Pastel on paper   Akiko Hirano

時の証人
平野明子 & Tim Wong

人類の最初、彼らは全ての生き物、そして山、川、岩などの無生物の全てが精霊を持っていると信じていた。もちろん彼らが正しい事を私は知っている。私は800年前、最初の人々がこの峡谷に定住した時、岩崖の上高くにある洞窟の中で生まれた。現代の考古学者は私を「キバ」と呼んでいる。最初の人々は別の名前で私を呼んでいたが、貴方にそれを言っても理解しないだろう。彼らは私の体を岩盤から彫り出し、体の中に入る四角い口を残して、木材で私の体を覆った。私が完全に形成され、そこで彼らは大きな式典を開催した。老首長が私に火を灯し、私は生き返った。私は今でも、彼らがやって来た霊界とつながるための「シパプ」と呼ばれる「へそ」を持っている。

幾多の季節の間、私は多くの式典を主催した。豊作と狩猟の成功の後の饗宴、新生児誕生の祝典、成人した若い男性のための儀式、又年長者が過ぎ去るという陰鬱な機会もあった。とにかく、その頃は良い年だった。もちろん、長く生きている人なら誰でも知っている、永遠に続くものは何もないことを。人口が増えるにつれ、峡谷はもはや人々を支えることができなくなった。最後の決め手は何十年も続いた干ばつだった。作物は不作に終わり、狩猟動物は姿を消した。隣人の間で戦いが勃発し、その後、広範な紛争と暴力にエスカレートした。それらはこの峡谷に存在する精霊を大いに怒らせた。家族から家族、一族から一族、と次々に追い払われ、彼らが一生懸命に建てた住居や村が後に残された。次の数百年は平穏無事、つまり、退屈だった。これまでに起こった最もエキサイティングなことは、私の体を彼らの家に変えたモリネズミの一群だった。そうした長い冬の夜、私は暖かい火の周りで私の仲間達が歌い踊っているのを夢見た。

そしてスペイン人がやって来た。私は彼らに個人的に会ったことはない。噂では、彼らはシボラと呼ばれる場所でいくつかの光沢のある黄色のものを探しながら通り過ぎたとのこと。彼らは気が狂っているに違いない、私達はそのような場所について聞いたことがない。スペイン人の後はカウボーイ。彼らはさほど我々を困らせなかった。一人違ったカウボーイがいた。彼はシャベルを持った多くの人々と一緒にやって来て、私の仲間達の死骸を掘り起こし、それらを美術館に送った。更には行った所々で彼は”R.WETHERILL”と自分の名を岩に刻んだ。

私は何世紀にもわたって様々な事を見てきた。これまでに起こった良い事の一つは、黒人がチーフになったときだった。この黒人のチーフは賢明だった。彼は、これらの峡谷を国定記念物、「神聖なる場所」に指定し、私達精霊を「神聖物の冒涜(ぼうとく)」から保護した。信じられないことに、この土地に対する尊敬の念を持たない次のチーフは、この「神聖なる場所」の大部分を保護から外した。彼はこれらの峡谷を一度も訪れたことがなく、それは理解できることで、彼は足に何らかの問題があり、歩行が困難であると聞いた。悲しいかな、彼の行動はこれらの峡谷に住む精霊を大いに怒らせた。その結果、彼はすぐに土地の保護を回復した別の懸命なチーフに取って代わられた。

何世紀にもわたって私はこの場所を見守ってきたが、あらゆる人々が私を訪ねてその梯子(はしご)を降りて来た。面白いことに、私が彼らを見ていることに気づいた人はほとんどいなかった。ある時、黒い髪の女性が降りてきて、静かにここに座っていた。しばらくして、彼女はバッグからカメラを取り出した。驚いた事に、梯子の写真を撮る前に私に許可を求めた。そして彼女は去る前に再び私に感謝の意を示した。彼女はわかっているのだ。

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Guardian   Pastel on paper   Akiko Hirano