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Eagle's Nest Ruin   Pastel on paper  Akiko Hirano

イーグルの魂

平野明子 & Tim Wong

「高所恐怖症の人はいませんか?名乗り出てくださーい!」ユートインディアンのガイド、レイモンド・トムは、大声で叫んだ。黒衣(くろえ)は多くの州からやって来た十数人の人々と一緒に、3階建て程もある高い岩壁にもたれて寄りかかっている、木の梯子の前に立っている。誰も何も言わない。テキサス州から来た、という女性は小犬を傍の木にくくり付けた。レイモンドが、まず崖の頂上に登り、梯子が転倒しないように片手!で掴んでいる。ツアーグループは一人ずつ彼の後に続いて登り、全員無傷で頂上の岩棚に到着した。そこから、アナサジインディアンの遺跡、‘イーグルズネスト(鷲の巣)’、へ狭い岩棚が崖の周りを畝っている。‘砂漠の染み'が美しく縞模様になって現れた岩肌(黄、オレンジ、赤、黒色などの筋が露出した岩肌に出現する)の洞窟の下に、廃墟がまるで空中にぶら下がって存在しているような遺跡である。

チャピンメサ周辺のアナサジインディアンが一斉にメサ(岩石台地)の頂上から下り、高度に防御された崖の住いに移動した12世紀から13世紀初頭の間に建てられた壮大な断崖住居の多くは、遠く離れた渓谷、現在のユートインディアンの土地にある。 1981年にユートマウンテン部落公園が設立され、遺跡を公開ツアーに開放した。黒衣はそれを知った時点ですぐ公園に行くことを決めた。

レイモンドはグループをリードして狭い岩棚を通り過ぎ、低く張り出した岩の下を身体をかがめて通り、メインの遺跡の前にある隔離された部屋の前で立ち止まり地面の小さな穴の横にひざまずいた。 彼はこの小さな穴がハーブ(薬用植物)を挽く(粉にする)ためにどのように使われていたかを示しながら、「ここはおそらくスピリチュアルリーダー(精神的指導者、祈祷師、メディスンマン)の部屋で、彼らは普段別々にわかれて住んでいました」。と説明した。ツアーグループは戸口の方に向かい、そこで彼らはメインの遺跡の2階にいることに気づく。

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Eagle's Nest Kiva  Photo  Tim Wong

その遺跡の狭い境界内で、かっての住民は、アルコーブ(洞窟、空洞)の一部を後壁として使い、円形のキバ(地下の儀式用建物)を構築した。メサヴェルデ国立公園(コロラド州南西部にあるアナサジインディアン遺跡)の完全に修復された遺跡とは異なり、この遺跡は発見された時のままの状態であり、住民が去った後、放置されて以来初めて見るような印象を与える。壁の白い漆喰の一部はそのまままだ残っているし、炉の横に置かれている四角い石は、換気口から入る風の方向を転換させ炉の火を守る偏向装置の役目をしている。地面の2つの小さな穴はシッパプ(起源の場所、人間が出現した場所)としての機能を果たす。キバ(地下の儀式用建物)の周りの7本のピラスター(壁から突き出ている木の柱)は、元来の屋根と2階の建物を支えるために使われた。「換気口の両側にある3つの三角形に注目してください。これらは‘山’を表しており、こちら側は黒く塗られ反対側は白く塗られており、夏と冬を表現しています」。とレイモンドはキバの壁を指して説明した。

 

ニッチ(壁のくぼみ)から、レイモンドはグループに見せるために彼が以前見つけた‘ある物’を取り出した。それはユッカ(イトラン)繊維をねじって作った擦り切れたアナサジインディアンの紐、に混じって織られていた人間の長い黒髪!だった。グループは遺跡の端に移動し崖の側面をのぞき込む。レイモンドは、岩の深い割れ目の上部にある風通しの良いバルコニーを支えていた木の梁が並んでいるのを指摘する。誰かがアルコーブ(洞窟、空洞)の天井にある‘あばたマーク’、粘土の塊が投げられたように見える丸い点、についてレイモンドに質問する。彼は笑いながら、「大人がキバを建設する(粘土と石などで)のに忙しい間、子供たちは粘土を壁に投げつけて楽しんでいたんだと思いますよ!」と応えた。

廃墟を後にする前にレイモンドは低く甘い声でインディアンの神話を話してくれた。

かつてプエブロ(部落)に孤児の少年が住んでいました。 16歳になったとき、彼は成人になったことを祝う儀式に参加しなければなりませんでした。村の長老たちは彼に荒野を旅して、鷲を連れてくるように指示しました。少年は弓矢を持って砂漠へと旅立ち、途中うさぎを見つけて矢で撃ちました。その夜、彼は地面に深い穴を掘り潅木(茂み)で隠しました。彼はウサギを上に縛り、穴に身を隠しそこで彼は眠りました。

翌朝、彼は鷲が上空を旋回しているのを見ました。彼は穴の中で辛抱強く待っています。鷲が急降下してウサギを襲ったとき彼は鷲の足を掴みました。鷲は力強く羽ばたき、少年の腕をくちばしでつつきますが彼は必死で鷲にしがみついています。やっと鷲は落ち着いて「抵抗する気はありません、なぜあなたは私を捕まえるのですか?」と問いました。少年は、部族に受け入れられるためにそれをしたと説明しました。鷲は「あなたが私を放すなら、私は将来あなたを助けることを約束します」と言いました。少し考えた後、少年はワシを解放しました。

少年が村に戻って来た時、長老たちは彼が鷲なしで帰って来たことに激怒しました。彼の一族のメンバーはこれまでこのテストに失敗したことがないのです。彼らは少年に村から出て行き、二度と戻って来ないよう言いつけました。悲嘆にくれた少年は村を出て砂漠に戻って来ました。彼は疲れ果てるまで歩き続け横になって眠りに落ちました。彼が目を覚ますと、あの鷲が傍にいました。 「どうしたんだ、どうしてそんなに悲しいの?」と尋ねました。その少年は鷲に何が起こったのかを話しました。鷲は「悲しんではいけない、私について来なさい」と言いました。鷲は前方へ飛んで行き、少年を高いメサに導きました。鷲は岩棚の上の巣に降り立ち、少年は岩を登り鷲に加わりました。

彼らは長い間岩棚に静かに座り、砂漠を見渡しました。太陽が地平線に沈むと、鷲は「私の両方の翼から長い羽を引っ張って、両手でしっかりと掴みなさい」と言いました。少年は言われた通りにしました。 「さあ、目を閉じて飛び降りるんだ!」。少年はためらうことなく崖から立ち上がりました。風がびゅんびゅんと速く通り過ぎていくのを感じました。最後の瞬間、彼は目を開けて腕を翼のように広げ‘鷲’になりました。そして彼らは夕日に向かって一緒に飛び去って行きました。

黒衣はその話を聞いて、物思いにふけった。彼女は‘イーグルズネスト’のような場所に住んで、子供を育てている家族のことを想像していた。彼女は中国や日本の古代の隠者が異なる理由で、崖の家に住んでいた時代のことを考えた。それは彼らにとって隠遁であり、安全で保護されているという感覚が与えられた。子供たちは皆、木の上の家や、まねごとの隠れ場で遊ぶのが大好きだ。おそらく私たちの祖先が安全と保護のために森林や洞窟に住んでいた時代から、原始のDNAをまだ持ち続けているのかも。

黒衣が部落公園を出て未舗装の道路沿いのチムニーロックを通り過ぎた時、空を見上げ、思わず微笑んだ。。。。二羽のゴールデンイーグル(イヌワシ)が風に舞い上がったのだ。彼女は彼らに「お二人とも、気をつけて!」と手を振った。

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Chimney Rock   Pastel on paper  Akiko Hirano