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White Pocket,  Vermillion Cliffs Monument   

Pastel on paper   Akiko Hirano

癒し(いやし)
Akiko Hirano & Tim Wong

どこからともなく砂漠の奥深くに、古代の海底が長い間に石と化した場所、誰も住んでおらず、ほとんど冒険のない‘魔法の地’がある。トレイルも、サインも、人工物は一つとしてない。彼女は空間と孤独を求めてここにやって来た。

 

炎天下、ここでは時間がゆっくりと流れる。雲を除いて唯一の動きは彼女の影であり、それはどういうわけかこれまでになく遅々として進んでいるようだ。彼女は自分の足跡を残さないようにスリックロック(滑らかな石)をまたいで、深い砂盆地の周りを注意深く進む。自分の軌跡が見えないようにしたいのだ。

 

彼女は地面がまるで巨大な波のように立ち上がる場所にやって来る。石化した時間の層の上に更に層。頂上近くで、浅い洞窟がサイクロプスの瞬きのない目のように見下ろしている。景色は超現実的な絵のように、ありそうもなく美しく、当惑する。暑さで疲れ果てた彼女は、日陰を求めて傾斜を這い上がる。

 

洞窟は、まるで子宮の中へと彼女を連れて行く。彼女は座り、膝を抱えて丸くなり、砂漠を見渡す。エドワードアビー(アメリカの著作家1927-1989)が言うように、赤とピンクに凍った荒れ狂う海は、心がつぶれることのないほど悲痛な美しさの地。彼女は体を後ろにそらし、横たわり、ゆっくりと呼吸し、深い眠りに落ちていく。夢の中で、巨大なくちばしを持ったカラスが彼女のそばに降り立つ、美しい黒い宝石を持って。

 

彼女が目を覚ますと、太陽は西の地平線下に沈みつつある。急いで、彼女は帰途につく。空気は冷たく、地球が変わったかのようだ。スリックロックの表面を覆う小さな結晶は、薄れゆく光の中で星のように輝く。彼女は他のことにも気づく;カブトムシが交差する線、モグラの不規則な線、そして忍び寄るコヨーテの意図的な足跡、砂漠は目覚めた。彼女は柔らかなそよ風に向って勢いよく歩く。気持ちは軽く、生き生きする。

彼女が車を見つける頃には、新月が昇った。彼女はポケットの鍵に手を伸ばし、丸く滑らかなものを掴む。彼女の手のひらに、光沢のある小さな黒い小石。