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Comb Ridge   Pastel on paper   Akiko Hirano

経路
平野明子 & Tim Wong

黒衣(くろえ)は、ユタ州とアリゾナ州の東の角を二等分する、ほぼ 100 マイルの長さの単層で出来たコーム リッジの頂上に息を切らして立っている。 北は、ギザギザの尾根がアバホ山脈に向かって伸び、南は 50 マイル離れたモニュメント バレーまで地平線がずっと続く。 西はピニオン松で覆われたシーダー メサ (現在はベア イヤーズ国定公園の一部)。そこのあらゆる峡谷に何世紀も前のアナサジインディアンの岩窟住居がある。 彼女の後ろには、はるか彼方の赤い砂漠、 コロラド州の雪をかぶった山々が100マイル先の地平線に沿って並んでいる。 緑のタマリスクが並ぶ乾燥したコームウォッシュは、尾根の下でサンフォアン川に合流する。目に見える限り、人工物と言えるものはコームリッジに添ってアリゾナ州に向うしなやかな弧を描く 2 車線の高速道路のみ。

尾根のすぐ下の高速道路脇に、ホブズ ウォッシュと表示された石造の歴史標識が立っている。1879 年の秋、83 台の荷馬車に乗った 250 人のモルモン教徒の男性、女性、子供達が、ユタ州エスカランテからブラフへの過酷で未知の地域を越え、最も無謀な旅の一つに乗り出した。荷馬車隊は、コロラド川峡谷のほぼ 2,000 フィートの切り立つ断崖に妨げられた。 ジョージ・ホブズが率いる 4 人の男性が、実行可能なルートを偵察するために派遣された。 12 月 27 日、 4 人の男性がコーム リッジの下の峡谷に到着した。 食べ物はなく, 凍りつき、疲れ果てた。生き残れるかどうかわからない ホブズは岩に彼の名前を刻んだ。 最終的に、彼らはモンテズマ (現在のブラフの近く) に到着し、戻って報告する。翌年、荷馬車隊はホール イン ザ ロックの断崖を下るきわめて危険なルートを突破し、ホブズのルートをたどりブラフに到達した。 エスカランテからブラフまでの全長 180 マイルのホール イン ザ ロック トレイルは、 人間精神の揺るぎない信念と勇気の証として表されている。

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Lithics & pottery shards   Photo   Tim Wong

ホール・イン・ザ・ロック遠征のずっと以前から、コーム・リッジは、この地域を横断する先住民にとって手ごわい障害物だった。 アナサジインディアンはこのバリアを横切る経路を作成した。 その一つは、黒衣が立っている場所の北約10マイルにある。 彼女は以前に、そのあたりの東側にある低木ブラックブラッシュの中を通り抜ける砂の道をたどった。 砂に半分埋もれた壊れた陶器の破片やフリントが散らばる道が、そのあたりの多くの峡谷の一つにつながっている。 彼女はそれをたどって、グリースウッドとモルモンティーが点在する小渓谷に入って行った。歩き続けるにつれて、小峡谷は、数百フィートの高さの巨大な曲線美の砂岩の崖に囲まれた広い峡谷へと深まって行った。 暗い縞模様の砂漠漆がオレンジ色の崖を飾る。空洞のアルコーブが警戒するような眼で彼女を見下ろしている。節くれだった ジュニパーは岩の窪みや盆地から成長している。数マイル歩いた後、彼女はブラックブッシュの群れが点在する幅広いサドル(鞍部)にやって来た。道は茂みの中をまっすぐに、 反対側のコーム ウォッシュを見下ろす尾根の端まで続く。 彼女は、これがコーム リッジの東側と西側を結ぶ古代の小道である可能性があることに気付いた。

巾広い石の傾斜路がサドル(鞍部)から尾根の頂上まで伸びていた。 頂上の下には大きなアルコーブがあり、アナサジインディアンの遺跡を抱合していた。 彼女はスリックロックを駆け上がり探索した。その場所からは、下の道と尾根の向こうの領域の素晴らしい景色が見えた。建物自体はひどく侵食され、 一部の壁だけが立っていた。 主要な建物は、正面の角が丸みを帯びた異常に大きな長方形の部屋で、この地域の典型的な住居よりもはるかに大きかった。後壁は平坦な岩の上に建ち、内壁はきれいに滑らかにされていた。 後壁の後ろにはいくつかの小さな部屋があり、ほとんどが崩壊していた。彼女はいくつかの未塗装の陶器の破片とトウモロコシの穂軸を土の床の周りに見つけた。 不思議なことに、この遺跡にはキバはなかった。 この地域の他のほとんどの遺跡に見られるトウモロコシを砕く道具も無ければ、薪の火で黒くなった壁さえ無かった。 また、現場には絵文字や道具を研ぐために岩に彫られた溝がなく、近くに水源もなかった。 おそらく、ここは 長期滞在用の宿泊場ではなく、尾根を渡る旅行者の立ち寄り場であったかも。とすれば、この広い部屋は旅人のパーティーを意味しているかも。

ディーゼルエンジンのかすかな騒音で現実に戻った黒衣は、眼下の道路を見下ろし、広いカーブを進む大型観光バスを見た。 1970年代に建設された2車線の高速道路は国道163号線で、 モニュメント バレーの象徴的な風景を通り、 現代の旅行者や観光客をアリゾナへと連れて行く。 ホブズ 歴史標識に気付く人はほとんどいないし、一 世紀以上前にここで 4 人の男性が道を開拓し命を落としそうになったことを覚えている人もほとんどいないだろう。

Ridgetop Ruin   Pastel on paper   Akiko Hirano

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