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Citadel Ruin   Pastel on paper   Akiko Hirano

絡み合い

 

平野明子 & Tim Wong

 

西暦1270年の冬。ひどく寒い夜、新月がこの地にかすかな影を落としている。彼は巨大な岩に隠れてしゃがみ込み、彼のプエブロ(部落)と西のメサ(岩石台地)をつなぐ狭い‘岩の背骨’(半島のように突き出たメサがあたかも背骨のような様相をしている)を見つめていた。何年にもわたる干ばつのため、友好的な氏族は敵になり、農民は侵略者と化した。暴力が激化する中、多くの住民はこの地域を去って行った。彼の家族は、自分達のプエブロが究極の防衛場所にあることを信じて、何とか頑張りぬいている。両側が垂直の切り立った崖の狭い尾根からのみ、敵が侵入可能な岩の塔の後ろに、プエブロは隠れている。侵略者は月の無い夜、攻撃することを知っているので、彼は二晩眠っていない、疲れていた。

プエブロから聞こえる騒ぎで彼は目を覚ました。石のハンマーをつかみ、騒音に向かって疾走し、息子と妻が数人の侵入者との死闘で拘置されているのを発見した。彼は最も近い男にハンマーを振り、頭蓋骨を砕くと同時にハンマーの柄も折れた。 2人目の侵入者は、妻を解放し、彼に向かって突進した。と同時に、妻は重いメタテ(石皿)を手に取り、男の頭を打ち砕いた。男は地面に崩れ落ち、続いて石皿が衝撃で半分に割れた。リーダーを失ったのを見た他の襲撃者は後退し、メサに向かって逃げて行った。後には瀕死の重傷を負った妻を抱きしめる夫、新月がメサの向こうに滑り落ちて行く。

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The peninsula   Photo  Tim Wong

2004年秋。太平洋上空33,000フィート、東京行きの飛行機の中、彼女は持って来た本を開いた。ユタ州南部のどこかにあるアナサジインディアンの遺跡、狭い岩の「半島」からのみ侵入できる岩の塔の後ろに隠れた遺跡、について読んだ。『私はその遺跡を見つける!』彼女は本を閉じ、思いにふけた。その冬、彼女は地形地図を熟考し、「半島」の説明に一致する地理的特徴を探した。そして一つの地図の上に、彼女は「X」マークと疑問符を、密集した等高線の横に鉛筆で印した。

春のある晴れた朝、彼女は道路から何マイルも離れたジュニパーで覆われたメサ(岩石台地)を爽快に、地図上の「X」マークに向かって歩いていた。不意に現われたメサの先端、彼女は大喜びで声を上げた。眼前には‘岩の背骨’の細長い砂洲(さす)がまるで巨大な‘疑問符’のように、高峰に向けて蛇行している。彼女は「半島」を見つけたのだ。それからの数時間、その‘岩の背骨’に‘乗る’方法を見つけようとするが、急なドロップオフ(岩が脱落している)のため何度もあきらめざるをえない。ついに、彼女は危険度の少ない遠回りのルートを発見する。しばし後には、彼女は「半島」の上を歩いていた。

「半島」は、植生のない裸の岩の平らな頂上の尾根であり、その両側に隣接して垂直のドロップオフが続く。気づかれずに高峰に近づくことは不可能だ。彼女は石の障壁の残骸を乗り越え、尾根の端まで歩いた。遺跡がある形跡はない。彼女は高峰の後ろを一周して上を見た。そこには、メサからは全く見えない、キャップロック(高峰の上の岩)の下に隠れた、完璧に保存された部屋の群れがあった。

 

「半島」を見守るための覗き穴のある大きな岩が、部屋への接近を監視している。彼女はその岩を乗り越えて自然の岩の台場によじ登り、石と泥で出来た一連の部屋を目の辺りにした。それぞれに出入り口があり、いくつかには窓もある。最初の2つの部屋は小さく、内部は白く塗られている。壁には木の棒が組み込まれていて、物をつるす道具として機能していたかも。最も驚くべきことに、完全に保存された窓枠は、小枝を平板状に、よりひも(植物の‘つる’)で結び作られている。彼女は職人の創意工夫と技量を賞賛せずにはいられなかった。一連の部屋が並ぶ末端に、黒ずんだ天井と上の壁に排気口のある大きな部屋があった。部屋の隅にある長方形のニッチ(くぼみ)は、炉として機能していたかも。地面にはアナサジのトウモロコシの穂軸が散乱している。調理場だったに違いない。

彼女は高峰の後ろに、キャップロック(高峰の上の岩)に通じる岩の割れ目を見つけ、そこをよじ登り上で、山積みになっている石を見つけた。それは、「半島」接近を監視する隠れ場の石壁の残骸だ。雨水を捕らえるために、浅いくぼみが岩盤に切り込まれている。かなり大きな木が、どういうわけか、キャップロックの上で成長するのに十分な水分を確保している。彼女は遠くの雷の音を耳にし、振り返ると、コームリッジ(東の方角にある連続した岩山)の上空には雨雲が発生していた。彼女は座って、雲が東から近づいて来るのを見、周りの峡谷のパノラマ景色を眺め、遠く地平線に横たわるSleeping Ute Mountain(ユートインディアンの神聖なる山)を崇める。ナント素晴らしい場所だろう!

嵐が近づき、耳をつんざくような稲妻が走り、彼女は突然、自分が落雷の完璧な標的にいることに気付く。急いでキャップロックから降り、その場を離れた。周りを見回し、くぼ地を見つけた彼女はそこにしゃがみこむ。その時、彼女は縁が磨かれた、長方形をした灰色の石が、傍の地面の上にあるのに気付いた。その石からそう遠くないところに、2つの重い岩板(石皿)がある。彼女は岩板を裏返して並べ合わせ、それらが壊れた半分ずつの石皿であることに気付く。これはアナサジインディアンの女性の貴重な所有物のはず、なぜか彼女は、ここで悲劇が起こった、と感じた。彼女は手にぴったり合う灰色の砥石を手に取り、それを石皿の上に注意深く置いた。大粒の雨が地面を叩きつけ始めた、どしゃぶりになってきた。

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Broken metate & mano   Photo  Tim Wong